INTERVIEW

それぞれの想い。

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建築士
根岸 龍介さん
40代

二拠点生活で目指す、新たなワーク&ライフスタイルの開拓

[根岸 龍介さん]
根岸龍介デザイン事務所 主宰
つばめ舎建築設計 共同代表
プロジェクトキッチン メンバー
複業ワイナリープロジェクト「ワタリドリ」

一級建築士。都内と寄居町での二拠点生活を計画中。
現在、プロジェクト開始に向けて拠点となる公園西エリアの建物のリノベーションを進めている。
ー 根岸さんは建築士のお仕事をされていますが、これまでの経歴をお聞かせいただけますか?
僕は千葉県出身で、高校を卒業した後、はじめに進学したのは映像系の専門学校だったんです。フィルムで映画を撮っていました。
ー 初めから建築系では無かったのですね。意外です。
ただ通っているうちに、もっと社会経験を積まないといけないなと思うようになって、その専門学校は退学することにしたんです。
周りは年上の方が多くて、映像を撮るにはやっぱり社会的なバックグラウンドが必要だと気付いたので。

その後、大学で勉強したいと思うようになり、勉強をして京都の大学に入ったのですが……基本的に関西の人が7割くらいの学校だったので、あまり学校生活に馴染めず(笑)。
ー それはちょっと辛いですね……
馴染めないんですけど、京都の街はすごく面白いし楽しかったんです。
それで、一人で黙々と京都の街をひたすら歩いて回る時期が結構続きました。
そこからなんですよね、建築に関心を持ち始めたのは。
ー 苦い経験がありつつも、そこが建築の道へのスタートだったのですね
そうですね。
その大学には2年半いたのですが、そこで「移住するって大変だな、新しい環境に飛び込むのは大変だな」という原体験をしました。
そういう意味では僕は移住とか全然違う環境に行くことについて、1回経験してその難しさもわかるので、そこまで前向きではなかったんです。
ー 寄居とはどうやってつながったんですか
もう3年くらい前になるのですが、新潟の小千谷市でオフィスをつくる仕事が始まったんです。
その時、新潟市に沼垂商店街という地域プロジェクトが有名な商店街があったので、そこのゲストハウスに泊まりに行ったんですね。
ちょっと面白そうだし、視察みたいな感じで行ってみようということで。

そのゲストハウスに泊まった朝に、寄居町の杉山さん(寄居町商工会局長)も宿泊されていたみたいで、朝食の席に声をかけていただいたんです。
とてもフレンドリーな感じで、それが面白くて、朝食をご一緒させていただきました。
そうしたら杉山さんが寄居で地域の活動をしているとう話をされて、「それは面白そうですね」みたいな……

面白そうだから一度寄居に遊びに行きますよ、となって、その場で寄居に行く日を決めました。
そして実際に寄居に行って、案内してもらったのが出会いなんです。
ー 本当にたまたまの出会いだったのですね
たまたまだったんですよ。
杉山さんには鉢形城や古い建物など町を案内してもらいました。
その時に面白そうだな、何かできそうだなと感じましたね。
ー そこからずっとお付き合いが続いているのですね
そうですね。
杉山さんがこっちに来た時には遊びに来てもらったり、呑みに行ったりとか。
こちらも寄居でイベントある時には遊びに行ったり。
水天宮祭も誘ってもらって見に行ったりしました。
そういう感じで1年、2年と過ぎて行って、今年は寄居でお仕事をさせていただいています。
ー そこからこのエリアで何かやろうかなと思ったきっかけはなんだったのですか
そこまで場所にこだわっていたわけではなくて、このエリアになったのはたまたまなんです。
ただ寄居で拠点を持っていた方がいいな、という想いもありました。
ー それはなぜですか
この後の話に繋がるところもあるんですけど、僕は二拠点生活のできるプロジェクトと思っているんです。
それもあるので、これは拠点を借りてしまった方が物事が前に進むんじゃないかと思ったんです。
ー その拠点では何をされようと思われているのですか?
町内の人に関わらず、多くの人が寄居町の魅力を見つけて、それをプロジェクトにする活動をしたいと思っていて、その活動を「プロジェクトキッチン」と呼んでいます。
ー 料理をするわけではないんですね
街の魅力を素材と捉えて「プロジェクトを料理する」という感じですね。

プロジェクトは寄居に関すること、例えば寄居のみかんを使った何かを作ろうとか。
そういったプロジェクトを起こす場所にしていきたいなと。
部活のように、プロジェクトが何個も並んでそれぞれが興味のあるプロジェクトをしながら、お友達やそういう繋がりで町に関わりが持てたらいいなと思います。
その時に部室として使えて、なんだったら少し泊まっていける、合宿もできるような拠点にしようと思っているんです。

僕個人でやりたいプロジェクトもあって、それがワイナリーなんです。
「複業ワイナリープロジェクト」のように考えていて。
二拠点活動しながら、葡萄栽培に関わろうと思っています。

寄居の折原地区ではすでに「折原ヴィンヤード」というプロジェクトが始まっていますので、そのプロジェクトに連携させていただくイメージです。その他に既に寄居町で活動している人にも関わってもらえると嬉しいなという感じですね。
プロジェクトが何個も立ち上がると、それぞれ混ざり合うというか、あのプロジェクトとこのプロジェクトで何か一緒にできないかということも生まれるかなと思います。

そういった人とコトが見える場所ですかね、「こんなプロジェクトが始まっているんだ」みたいな。
そんな場所にしていきたいという思いがあります。
ー お仕事の建築関連の話ではないのが意外です
東京に住んでいる人で田舎で暮らしてみたいとか二拠点活動をしてみたいという人も多いと思うんですけど、仕事もないのに田舎に通うのってなかなか難しいと思うんです。
やることがそんなにないのに拠点だけ移すって難しいと思うので。

だから、お試しでプロジェクトを作ってしまって、それをきっかけに町と関わるということができたらいいなと思っています。
そういう仕事や関わるプロジェクトがあると、通う理由になるかなと。
例えば普段は都内で働いているけど、週末ちょっと畑に通って農業をしてみたいとか。
ー 普段とは全く違うことができるのは、とてもリフレッシュしそうです
目指しているワークスタイルがひとつあって、それが元なんです。

設計事務所の仕事はパソコンに向かっていることが多いので、ちょっと不健康だなと日頃から思っていました。
そういうのもあって、事務所ではDIYしながら場所をつくるということをしています。
そうすることで肉体労働をすることができて、頭だけ使っている時よりすごく健康的なんですよね。
頭脳労働と肉体労働、いわゆるホワイトカラーとブルーカラーですよね。
そのどちらかで働けばいいというよりも、両方をバランスよく取り入れることが大事だと感じています。


そしてそこに、私たちとしてはもうひとつ色を入れようと。
トリコロールカラーと勝手に言っているんですけど、ホワイトとブルー、そしてレッドがある。
レッドというのは、ホワイトともブルーとも違う、全く新しいことを行うというイメージです。
前の2つの仕事とは直接リンクしない仕事をもう1個やってみる。
その3色をうまく組み合わせていく、というワークスタイルを目指しているんです。

その上で、僕にとってワイナリー、葡萄を育てるのは、新しいことにチャレンジするという意味でレッドなんですよね。
ー とてもワクワクしますね
実験的なんですが、まずやってみて、自分たちが面白いことができたらいいなと思っています。
それが結果回り回って、寄居にとって良い流れにつながるといいですね。
ー 最後に、根岸さんが思う寄居の魅力はなんですか
まず都心から車で90分、電車でのアクセスもいいのに、山や川など、これだけ近いところに自然があることですね。
あとは中心市街地の街並みも魅力的です。
あまり開発が入っていなくて、昭和の建物が残っているところとか。
いわゆる古民家ももちろんいいんですけど、まず保存に重点が置かれて古民家だと自由にできない感じもするんですよね。
それに比べて昭和の建物は自由にリノベーションしやすい気がします。
型に嵌まらなくても許してもらえそうなのが昭和の建物の魅力ですよね。
ー お話を伺っていると、寄居町が面白くなりそうな気がします。ありがとうございました。
ありがとうございました。
<根岸さんのプロジェクトについてご紹介>
プロジェクトキッチン 〜rutsubo〜
寄居駅前の元タバコ屋だった昭和の建物をリノベーションしたプロジェクト拠点。
2021年、根岸龍介、尾形慎哉、加藤隆也により開始。
「複業ワイナリープロジェクト」などの町プロジェクトを行う。